はじめに
仕事をするうえで避けて通れないのが「通勤」。
毎日の電車、自転車、車での通勤は当たり前の光景ですが、実はそこにも「労災リスク」が潜んでいます!
厚生労働省の統計によれば、通勤災害は年間10万件を超える申請があり、その数は業務災害と並ぶ大きな割合を占めています。
それだけ「通勤途中の事故」は誰にでも起こり得るということになります。
しかし「どこまでが通勤災害として認められるのか」「寄り道した場合はどうなるのか」など、正確に理解している方は少ないのではないでしょうか?
この記事では、通勤災害の定義・認定条件・逸脱・中断の考え方、実際の裁判例や最新データを踏まえ、労働者と企業が取るべき対応をわかりやすく解説させていただきます🚴
通勤災害とは?定義の確認
労災保険法第7条は通勤災害を以下のように定義しています。
労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間の往復、またはこれに準ずる行為の際に発生した災害。
つまり「自宅と会社の往復に合理的な経路・方法で移動している際に発生した事故」は原則として通勤災害とされます。
ここで押さえるべきキーワードは 合理的経路 と 就業に関し という点になります。
業務災害との違い
項目 | 通勤災害 | 業務災害 |
---|---|---|
発生場所 | 自宅~会社の往復経路 | 業務中の職場・出張先 |
典型例 | 通勤中の交通事故、駅での転倒 | 工場での機械事故、営業中の事故 |
労災対象 | 原則として対象(合理的経路) | 原則対象 |
ポイント | 逸脱・中断があるかどうか | 業務との因果関係 |
通勤災害と混同されやすいのが「業務災害」です。
- 業務災害:業務そのものが原因で発生した災害(例:製造現場での機械事故、営業中の交通事故など)
- 通勤災害:就業に関して通勤途中に発生した災害(例:電車内での転倒、自転車通勤中の交通事故など)
両者とも労災保険の対象ですが、認定の基準は異なります。
通勤災害に該当する具体例
電車での通勤中の事故
- 駅の階段で転倒
- 電車が急停車し負傷
自転車・バイクでの通勤
- 出社途中で車と接触し骨折
自家用車での通勤
- 合理的経路での事故
徒歩での通勤
- 通勤路での転倒、道路の凍結による事故
通勤災害に該当しない具体例
- 帰宅途中に居酒屋へ寄った後の事故
- 友人宅に立ち寄ってから帰宅途中の事故
- 趣味のジムに通うための遠回りでの事故
これらは「私的な行為のための逸脱・中断」とされるため、原則として労災は認められません。

会社帰りにスーパーへ寄るのはOKかな?

日用品の買い物程度なら“合理的な行為”として認められる場合があるよ!
逸脱・中断の考え方
用語 | 意味 | 認定の可否 |
---|---|---|
逸脱 | 合理的経路から外れること | 原則不可 |
中断 | 通勤中に別の行為を行うこと | 原則不可 |
例外 | 保育園送迎、投票、日用品購入 | 認められる場合あり |
通勤災害の認定で最も議論になるのが「逸脱」と「中断」です。
- 逸脱:合理的経路から外れること
- 中断:通勤とは関係ない行為をすること
ただし、以下の行為は「社会生活上必要」とされ、認められることがあります。
- 子どもの保育園送迎
- 投票所への立ち寄り
- 日用品の短時間購入
判例・裁判例から学ぶ通勤災害
- 保育園送迎後に交通事故 → 通勤災害認定
子どもの送迎は社会的に必要な行為と判断。 - 飲み会帰りに事故 → 認定されず
通勤と無関係な私的行為と判断。 - 帰宅途中に長時間のショッピング → 認定されず
合理的経路を外れた逸脱と判断。 - 帰宅途中にATMで現金引き出し → 認定
生活に必要な行為と認められた事例。

“ちょっとした寄り道”でも、内容や時間の長さ次第で結果が変わるのね!
通勤災害が認められると受けられる補償
補償の種類 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
療養補償給付 | 医療費の給付 | 健康保険と異なり自己負担なし |
休業補償給付 | 休業4日目から給付 | 給付基礎日額の約60% |
障害補償給付 | 障害が残った場合 | 障害等級に応じて給付 |
遺族補償給付 | 死亡時に遺族へ給付 | 遺族年金・遺族一時金 |
- 療養補償給付(医療費)
- 休業補償給付(休業4日目から給付)
- 障害補償給付
- 遺族補償給付
これらはすべて労災保険から支給されます。
労働者が取るべき備え
通勤経路を会社に申告しておく
寄り道は最小限に
事故が起きた場合はすぐに報告・診断書を準備
企業が取るべき備え
- 就業規則に通勤方法を明記
- 通勤災害が発生した場合の報告フロー整備
- 自転車通勤者への安全教育
- テレワーク導入など柔軟な働き方の推進
最新データ:通勤災害の発生件数
令和4年度厚生労働省データ
区分 | 発生件数 | 割合 |
---|---|---|
通勤災害全体 | 約110,000件 | 100% |
交通事故 | 約77,000件 | 約70% |
転倒・転落 | 約25,000件 | 約23% |
その他 | 約8,000件 | 約7% |
厚生労働省「労働災害発生状況」より、令和4年度の通勤災害は約11万件。
そのうち交通事故が7割を占めています。
背景には自転車・バイク通勤の増加や、都市部での混雑による転倒事故も含まれています。

通勤災害は誰にでも起こりうること。労働者も会社も“もしも”に備えることが大事なのね♪
海外との比較
例えばドイツやフランスでは、労災保険の枠組みで通勤中の事故も広くカバーされています。
一方アメリカでは州ごとの制度により対応が分かれるため、日本のような全国一律の仕組みは少数派です。
日本の通勤災害制度は「手厚い労働者保護」を特徴としています。
企業のリスクマネジメント事例
大手製造業A社:自転車通勤者にヘルメットを支給し、事故率を大幅に減少
IT企業B社:フレックスタイム制で混雑時間帯を避けさせ、通勤事故の減少に成功
物流業C社:通勤経路の事前届出を徹底させ、事故後の労災認定トラブルを防止
まとめ
通勤災害は、誰にでも起こり得る労働災害の一種です。
- 通勤災害は「合理的経路・方法」での移動中に発生した事故
- 逸脱・中断がある場合は原則対象外
- 生活必需行為は例外的に認められる場合もあり
- 労災保険により医療費・休業補償がカバーされる
- 労働者は経路申告・企業は制度の整備が必須
正しく理解し、企業と労働者双方が備えることで、万一の際も安心して対応できます。
それでは今日もご安全に!!
行ってらっしゃい🐶
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